八代目当主・すみか その六
1028年
１月 紅蓮の祠
新年の挨拶有り難うイツ花さん。
今年は良い年になると良いよね…（切実に）。
鋼矢の指導の結果。
これは凄い。５０上がりが二つもあるし、他も高水準。
何やらせても優秀だなコイツ…。
…なんて思っていたら鋼矢の健康度の低下が始まりました。え、本当止めて欲しい（涙）
実際問題として、親王鎮魂墓の事件以来、八九寺家って鋼矢を中心に回っていた所があるからな…。すみかがハイスピードで成長しているとはいえ、抜けた後の穴を塞ぐのは当分難しそう。
取り合えず友くんの訓練、今月はすみかにお願いします。
「すみかちゃんの言う事を…良く聞いて…」
「はい。でも…父上は…？」
「おれは…やる事があるから…。留守番を頼む」
で、鋼矢は…。
就寝前の漢方で健康度を回復させます。
そして、鋼矢・鵬喜ちゃん二人体制で討伐へ。
「こ、鋼矢くん…。無理…しないで…」
「おれは大丈夫だよ。薬も効いているし。それより鵬喜ちゃんこそ、無理しないで良いんだよ」
「わたしも大丈夫…一緒に行くから、絶対に！」
陣形は鋼矢が前、鵬喜ちゃんが後ろで。
行き先は紅蓮の祠。鳴神小太郎の打倒＆解放が目的。十二ノ宴までスムーズに行ける様になれば象花火狩りがし易くなるし、今年の白骨城討伐に際して是非欲しい術「鳳招来」、更に『扇の指南』も上手くすれば入手できるかも…という算段。
この時のプレイヤー、完全に鋼矢視点というか…自分が動ける間に少しでも戦果をっていう焦りが乗り移っているような感じでした。
赤い火は無し。
さくっと炎舞廊に到着。
「鵬喜ちゃん…」
「？」
「いや…大丈夫。大丈夫だ…（おれは、絶対に、鵬喜ちゃんだけは攻撃しない…大丈夫だ…）」
ここで鋼矢の装飾品を朱の首輪にチェンジ。これで技火は４００を超えます（後半に伸びてくれたおかげで、彼の素の技火の値２６７になっていました）。
打倒カウント数だけでも行けそうですが、鋼矢は絶対確実な方法を選ぶだろうな…と思ったんだよ…。
今度はその頭ごと朱の首輪を打ち抜いてやるからな！（物騒）
心が痛むボスに野分進言…。
だけどこれは小太郎が怖いっていうのも勿論だけれど、朱の首輪を装備している鋼矢の鬼気迫る雰囲気にのまれているっていうのもあるんだろうな…。ごめんな鵬喜ちゃん…。
でもここは疾風剣。７００越えダメージ！
上手くすれば次の鋼矢の手番で首輪外して止めが刺せる…と思ったら混乱した！仕方がないとはいえこのタイミングか…。
だけど鋼矢、何もしなかったんだよな…自分にも、まして鵬喜ちゃんにも攻撃しなかった。この色々耐えている様子が辛い…でもこういうの好きなんだ…（こら）
この進言はもう納得しかない。そりゃあ治したくなるよな混乱…。
プレイ効率の方を優先させれば此処でもう一回鵬喜ちゃんに疾風剣使って貰うのが断然良いんですが（それで倒せる筈）、ここで攻撃を優先させるような子じゃないんだよ鵬喜ちゃんは…！
ってな訳で神仙水！
間に花乱火を喰らいつつも…。
今度は鋼矢にターン回った！鵬喜ちゃんのお陰で治ったんだ…（感涙）。
朱の首輪も含めて装備品を変更しての連発式がまさかのミス！
健康度低下している所に二度目の朱の首輪を装備した事で体調不良が一気に進んだとか、そんな感じに思えて仕方がない…。
鵬喜ちゃんによる回復を挟んでももう一回連発式！今度はヒット！
鳴神小太郎打倒＆解放に成功！
これで紅蓮の祠も迷宮奥まで進み易くなりました。
顔の上半分が見切れちゃった小太郎さま（何時も申し訳ない…）。
更に奥に進んで十二ノ宴へ。
今回は象花火狩りが目的ではないけれど、折角なので美味しく頂いておきます。
鵬喜ちゃんレベルUP。じわっと心渡も成長させてくれるの有り難い…。
鋼矢は体の火と水の上昇が無くなりました。でも風と土まだ上がっているし、技火・水はまだいけそうだし…え、本当に居なくならないで欲しい…
スペック高い二人でも手数が少ない事もあって、そう簡単に倒せない天魔大将チーム。二人の（大将を狙った）寝太郎やくららが失敗した時は引波の御守を使って逃げる作戦で、じりじりと狩りを続けていました。で、炎ラスト一つ。引波の御守も使い切って、だけど戦果が何もない。せめて後もう一回戦って…とぶつかったチームで術「鳳招来」が止まった！
これは是非欲しい！まずは定石通り対象を眠らせ…
あれ、眠らせたのに舞い首に変身された？！
変身するのは大将じゃなくて火の車なんだからそりゃそうだろっていう、如何しようもない初歩的ミス一つ目（思えば大将と火の車が横並びの陣形だった時は寝太郎で両者共に寝ていたから変身されなかったんだよ…）
ここでプレイヤー、凰招来の威力にビビって、前列に居る鋼矢がヤバい…と後ろに下げてしまいます。これが二つ目のミス。
後列しかいない陣形の場合、結局全員が前列に居るのと扱いが同じになる事を失念していました（思い出したの討伐終了して全てが終わった後）。
後列で鵬喜ちゃんが喰らった時よりも威力が格段に高まった火術が次々に二人を襲いました…。
鋼矢と鵬喜ちゃんが…各迷宮のボスを倒してきた鋼矢と鵬喜ちゃんが…何も出来ずに…。僅かな容赦もなく…強制敗走…
イツ花さん…。
正直この言葉を聞いて思いました。これ、道の途中で雪に埋もれていた死体が発見されて、それが今、運び込まれたとかなんじゃ…。
ごめん…ごめん…。
八世代目長男の鋼矢。断トツの素質を持つハイスペック青年。
早熟な技土であっという間に雑魚を瞬殺出来るまでになり、更に防具の不利を補える体土の高さ。高低差のある素質の中でも本当に伸びなかったのは心火くらいで、それでいて戦いが消極的かって言うとそうでもなくて、むしろ積極的に前に出てくれて、進言採用していれば確実に鬼を吹っ飛ばしてくれていました。
親王鎮魂墓で自分以外のメンバーが戦闘不能、鵬喜ちゃんは鷹比等の反魂で一命を取り留めたもののなのかは死亡。七花が心身共に戦線離脱とう泥沼の状態から鵬喜ちゃんを引っ張り上げて、兎にも角にも前に進む事が出来たのは鋼矢の存在あってこそ。
ただ、あの時の出来事を唯一最初から最後まで目撃していた事、自身が余りに優秀過ぎる事もあって、彼にとってあの事件以来家族は対等な存在ではなくなってしまった気がします。
家族は“守るべき、大切な存在”。
だけど、だからこそ。厳しい言い方になってしまうけれど、鋼矢は誰も“信用”出来なくなった。
七花から受け継がれたであろうすみかの、決して折れない心の強さ。或いは鵬喜ちゃんの、辛くても共に戦い続けようという優しさ…何もかもを信じていなかった。あの時の様に呆気なく壊れてしまう、簡単に失われてしまうものだと扱って、彼女達に心も背中も預けなかった。
全部一人で背負って、一人で何とかしようとした。そして割と何とか出来てしまっていた（ボス戦では鵬喜ちゃんの攻撃力に頼る所もあったけれど、それでも鋼矢の圧倒的安定感が支柱だったからな…）。
自分は絶対に失敗出来ない。家族を守る為に、冷静でいなければならないという強い思いで心の火を滅多に上げる事が無かった鋼矢。そんな彼だからこそ、すみかが長じるに従って焦燥を消していったのとは真逆に、内心で焦りを積み重ねていったのかも。
皆は大丈夫、自分が居なくてもきっとやっていけるとは考えられなくて、信じられなくて。自分が居なくなった後、皆が少しでも楽に討伐が続けられるように、鬼との戦いで優位が取れる様にっていう…何処までも“家族の為の思い”が、紅蓮の祠での失敗に繋がってしまったのかな…（いや勿論究極的にはプレイヤーが阿保ってのが一番の原因なんだけれど、引波の御守が無い中でもう一戦！っていうそもそもの判断が何か…鋼矢がさせたみたいで…）。
親王鎮魂墓での出来事を全て目の当たりにして、それでも折れる事なく、絶望のどん底だった七花を元気付けなければ、生き残った鵬喜ちゃん、生まれたすみかの命を背負って、皆が無事でいられるように戦わなければとずっとずっと頑張って来た鋼矢。
一時ガタガタだった八九寺家を立て直し、各迷宮の最奥まで進めたのは、大ボスを倒して行けたのは彼のお陰で…。だから、プレイヤー視点からすれば、もう十分過ぎる程って思えるんだけれど、それでも…それでもやっぱり、鋼矢には中途半端だったって、考えてしまうんだな…。それを、謝るんだな…。
こんな所で。こんな中途半端な所で。
（応えられるようなものが、あれば）
…ですよね。
鋼矢については間違いなく氏神推挙有りだと思っていました。そもそも彼が来た時だからね、氏神に関する情報が出たの…。
実際はほぼ全てのバーがもっと右寄りに来ています。スクショ下手で本当申し訳ない…。
こうして見ると大部分の遺伝子で良い方を表出させているんだな鋼矢…そりゃあ素質も高くなる訳だ…。
因みにこの氏神名の元と思われる国之常立神（くにのとこたちのかみ）は日本書紀の中では最初に登場した神様なんだそう。八九寺家最初の氏神に成ると当初は目されていただろう鋼矢にこの名前が付くのも何だか皮肉というか…誰が考えたにせよ、これは元々用意されていた名前っぽいね…。
このスペックは氏神になってからも惜しい。
だけどさ…。あの謝罪を聞いた瞬間…鋼矢はもう背負った荷物を下ろしていい。何よりこれ以上背負わなくて良いよって、思いました。だって彼、氏神になったらこれから生まれてくる子の事まで絶対責任感じてしまう筈だから…。
寿命月前に亡くなった場合、氏神になる／ならないの決定権は観音母さま（粉雪）と破壊神さま（鷹比等）になるんだけれど…。だけどさ、雪さんもきっと、お前はもう十分やった。だからもう休めって、言ってくれると思うんだ…。
そして、イツ花さんの言葉からの予感を裏打ちするように…。
二度目の死亡判定も回避…出来ませんでした…。鵬喜ちゃんは最長寿命になっているから七花みたいにもしかして…と思っていたのですが…。
八世代目の二番目。長女の鵬喜ちゃん。
うっかりあっさりで交神下にもかかわらず、ひっくい技と体の土を表出させてしまった撃たれ弱い剣士。
ただ、其処は高い体力のお陰でそこそこカバー出来ていたし（これは心渡の補正のお陰もある）、更にパパ鷹比等譲りで攻撃面に関しては優秀。特に美剣白鳳との相性が抜群で、面白い様に鬼をスパスパ切り裂いていました。
初陣で、特に苦労するでもなくひょいッと奥義を復活させる程、戦いに関しては天才的な資質を持つ彼女。
（天才であるが故に）驕る事もなく、ニコニコしながらなのかの後を付いていく…そんな明るいイメージは、この親王鎮魂墓でのなのかの戦闘不能、七花と自身の戦闘不能、更にその後に続く鷹比等の反魂による死となのかの戦死という泥沼の展開で粉々になってしまいます。
一度は死んだ事、結果鷹比等が命を落として、自分が助かってしまった事。それなのになのかは死んでしまった事…色々な死を抱えて、怖くて、苦しくて…。
鋼矢のお陰もあって落ち込みのどん底から抜け出し、討伐を続けたけれど、きっと怖さは解消されないままだったんだと思います。それがボス戦等で頻繁に見られた“野分”進言だったんじゃないかと…。
だけどそこで戦いを止める選択肢はなかった。
戦うのは怖いけれど、剣を置くにはあの時“自分だけが助かってしまった”“父親の命を犠牲にして生き延びた”という傷が余りにも大きすぎた。
苦しい、怖い…それでも罪悪感が、恐怖が戦場に向かわせる。だけど、そんな戦場に居る事に拘る理由も、後半はきっと、“鋼矢がいるから”に変わっていったんじゃないかと思います。
勿論罪悪感が消える訳ではないけれど、五郎ズ戦の只管鋼矢に回復進言を見てもね…何でもやってしまおうとする鋼矢の傍にいないと、彼が本当に一人になってしまう。彼についていけるのはもしかしたら自分だけかもしれないからって…そんな風に思ったから…。
そう思ったから、焦燥に駆られた鋼矢にも付いていこうと決めた。それは朱の首輪の混乱効果まで打ち消す程強いものだった。
だから、これ…この言葉…鋼矢へ向けた言葉なんだよ…。
鋼矢くんと一緒に居られてよかった、ありがとうって…。何だよ泣くしかないだろこんなの…。
で、突然鋼矢の遺言に戻るんだけれど…
ゲーム上の亡くなった順番は年齢順になるけれど、実際の所は鵬喜ちゃん→鋼矢になるんじゃないかなって思いました。鵬喜ちゃんの感謝の思いがあったからこそ、鋼矢はずっと一人で背負っていた荷物を下ろして“好きにやればいい”って言えたんじゃないかな…。
ずっと助けて来た鵬喜ちゃんに、鋼矢はきっと最後に救われたんだよ…そうなんだよ…。
あー来たか氏神…。
これは鋼矢が蹴ったからかな。彼女は元々突出したものがあるから、何方にしても推挙されたのかな…。
その父系技土！
来訪時の鵬喜ちゃんの素質見て、生まれた時父系は長い方引いた様に見えたの錯覚？って思っていたけれど、見間違いじゃなかったんだ…二代に渡って眠り続けるとか寝すぎだろ（笑）
“冬衣”という氏神名も、柔らかい響きが好きなんだけれど、冬に、きっと雪に埋もれる様に亡くなったであろう彼女につける氏神名としては何だか皮肉のような…。
だけど、鵬喜ちゃんについては、鋼矢を氏神にしない決断をしたと同時に、遺言で余程ひっくり返されない限り氏神にしないと決めていました（勿論鋼矢同様惜しい能力を持っているし、正直二人連続で決断を迫られるとは思っていませんでしたが）。
それで、最後が鋼矢に関する感謝で…。一緒にいてくれて、ありがとうっていう言葉で…。鵬喜ちゃんはきっと鋼矢と一緒にいる方を選ぶっていうプレイヤーの考えは間違ってなかったと思いました。だから…うん、鵬喜ちゃん、鋼矢と一緒に休みなよ…。
わたしは、鋼矢くんがいたから、頑張れたんだよ。
鋼矢、鵬喜ちゃん…本当に、本当に…お疲れ様…。
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