二代目当主・伊豆湖　その五



３月　春の選考会

　正弦と二つ扇ノ前さまとの子供がやってきました。

　薄暗い雰囲気の八九寺家には嬉しいコメントと共にやって来たのは２２番ちゃん。扇（おうぎ）と命名。忍野メメの姪？忍野扇から命名。物語的にはママから一文字貰った感じ。

　飛びぬけた火属性のバーが眩しい。そしてこの悩み…来訪時のコメントと合わせると、笑い過ぎてしゃっくりが出る…という事か？なんだそれ可愛いな！
　火こそ断トツに高いですが、心に関してはその他の各属性が拮抗していたりもするので、物事を俯瞰して観察し、それを楽しむタイプなのかな…。頭の回転も速いし、察しもいいので忍が背負ってしまっている彼是も早々に気付きますが、それでもきっと、笑顔でさらっと受け流してくれそう。

　「はっはっはー、忍先輩も大変ですねえ」
　「…何だよそれ」

　扇ちゃんのお陰で忍の雰囲気はかなり変わったんじゃないかなって気がします。同世代の子が扇ちゃんみたいな物怖じしない明るいタイプで、ガッチガチになっていた肩の力がふっと抜けちゃったというか。
　下世代が良い感じに動いてくれそうな中、最年長の余弦の健康度が低下し始めました。忍と討伐に行って緊張の糸が切れたみたいな感じだな…。そのまま彼女に扇ちゃんの指導をお願いします。下の子達と噛み合っていないのは変わらないけれど、扇ちゃんなら大丈夫って気がする。


　「ねえ、あなた。忍野兄さんを守ってくれる？」
　「え…ああ、先輩ですか？勿論ですよ」
　「本当？本当に？お願いしてもいいの？」
　「ええ、お任せください！ふふふ…」

　男性陣は選考会へ。
　春は参加チームも少ないし、初回さえ切り抜けられれば…と思っていたけれど、その初回が厳しい所と当たってしまった。
　
一回戦：大原野魔術団…兎に角伊豆湖起点の術の併せと思っていたものの、相手の通常攻撃だけでも100越えダメージでかなり痛い。これは駄目か…と諦めかけた時、魔術団員二人が揃って何故か忍に黒鏡。現状最弱の忍の能力を映してくれた結果、受けるダメージが10を少し超える程度にまで軽減。迷走したとしか言いようがない魔術団のお陰で何とか有効勝ちに持ち込めました。
　因みに忍は自分も同じくらいダメージを喰らっているのに正弦を回復しようとしてくれていました。良い子…！
二回戦：茶屋町自治会…一回戦に比べれば圧倒的に楽なチーム。あっさり一本勝ち。
　
決勝戦：円山町愚連隊…いや本当一回戦に比べれば（以下略）。此処も一本勝ちで優勝！

今回の勝因は初回の黒鏡だよ（笑）。
でもこれ、忍は地味に傷付いているだろうな…自分の能力写した相手が露骨に弱体化したもんな…。



　それじゃあ遠慮なく、「赤ノ指輪」「黄ノ指輪」「土ノ指輪」「御井戸茶碗」「無一物茶碗」を頂いていきます帝！



４月　交神の儀

　余弦の指導の結果。
　
　正直忍の時より上がっている気がするのは自力の差かも…。扇ちゃんの素質、忍の倍あるから。
　余弦の健康度は６３に低下。彼女の場合、体もそうだけれど、心が弱っていそう。いやそれまでも不安定だったけれど、外部からの反応すらも薄くなってきている感じ。

　扇ちゃんの指導はパパの正弦にお願いします。
　
　何度も言うけれど、この子決して弱い訳じゃないんだよね…。伊豆湖よりも優れている所だってあるんだから頑張って！

　そして今月は円子まで習得していた伊豆湖の交神。お相手は椿姫ノ花蓮さま。
　
　“お友だちに”って言葉、伊豆湖には凄く新鮮に響きそう。彼は二ヵ月で当主になって、それに重なった初陣で父親戦死して、兎に角気を張っているから。
　
　感情も心の奥に閉じ込めて、只管鬼を狩る伊豆湖は、ここで少しは安らいだりできるんだろうか…。
　生まれてくるのは女の子。



５月　鳥居千万宮

　正弦の指導の結果…肝心のスクショがありませんが、余弦と同じ位でした（頑張ってくれたのにゴメン正弦…）。
　扇ちゃん実戦部隊へ。コメントは無し。

　「…扇、大丈夫か」
　「ええ、私は忍先輩を信頼していますから。何かあったら回復お願いしますね、うふふ…！」
　「おい…あんまり笑っているとまたしゃっくり出る…いやその前に当主に怒られるぞ」

　伊豆湖鬼軍曹は女の子だって容赦ない。
　年長者余弦の健康度は２５に。そして正弦も８８に低下を始めました。君もか…（涙）。正弦には一日三回の千金人参で９６まで回復させます。


　このメンバーで向かうのは鳥居千万宮。
　黄川人の話、多分伊豆湖は意識して聞き流しているんだろうけれど（結構胸を抉る事言うので）、扇ちゃんはきちんと話の内容を覚えている気がする。
　さくっと百の鳥居へ。扇ちゃんはやっぱり火関係の上昇が凄い。あと進言が攻撃系ばっかりだ（笑）。

　

　そんな中風車ノお七さまを解放！
　宝箱からは「分福茶釜」「強壮体土薬」を二つ入手。薬は早速扇ちゃんへ。計１３の上昇。更に術「防人」に加え、するっと「槌の指南」も入手。相変わらず良く分からない運を持っている八九寺家…。

　若干成長値が凸凹なのが不安とはいえ、若手も成長し、指南書と言う思わぬお土産も手に入れて帰宅して…。



　二世代目に関しては忍野くんの戦死前と後でガラッと雰囲気が変わってしまっていますが、歪んじゃったのが余弦。
　それまでの自分が“家族を助けられる力がある”という自信を持っていた分、それを一気に叩き折られます。認めたくない現実の代替として忍野くんと同じ父神を持ち、同じ職業で、似た名前を付けられた忍が誕生する訳です。
　勿論彼女だって、心の底ではどんなに取り繕ったって兄が死んだ事実が消えないと分かってはいます。だけど余弦が認めたくないのは、正確には“忍野兄さんが討ち死にした事”ではなく“忍野兄さんを助けられなかった自分”で、其処から目を逸らしている限り、忍を前に歪んでいくしかなかったんだよな…。



　最後の最後にやっと吐き出せた、あの時の後悔。


　（この人は、過去だけを見続けていたのだな）





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